
佐藤可士和さんの本。
買ったのはたぶんこの仕事に就いて2年目くらい。
とにかくよく見ていた。
だけどここで書きたいのは佐藤可士和さんのことじゃない。
佐藤可士和さんと服部一成さんのこと。
この本の服部さんの文章が大好きだ。
可士和くんの作るものは全て明快で、見る人をスカッとさせる。
そこにはネガティブな発想は一切なく、見る人はとても元気が出る。
これはほんとに稀な才能だと思う。
可士和くんは、ステージが大きくなればなるほど、
メジャーな仕事ほど、力を発揮する。これもすごいことだ。
僕は可士和くんとはかなり違っている。
不明確なものに興味があるし、つい、謎めいたものを作りたくなってしまう。
そういうわけで、僕は可士和くんの作るものはとても好きだが、
作者に嫉妬したりはしない。
可士和くんも不思議と僕の作るものに興味を示すのだが、
その目は遠くの景色を見ているようにやさしい。
どうやら僕と可士和くんは川の両岸を歩いているのだ。
このあいだまでは、原っぱの細い道を、
僕は前を行く可士和くんのあとについて歩いていたはずなのだが。
川幅はどんどん広くなってきた。
喋り続ける可士和くんの大きな声ももう聞き取れないほどだ。
立ち止まって眺めると、対岸を元気よく走る可士和くんが
黄色い点のように見える。
その風景は、僕にとってかけがえのない、とても大切なものなのだ。
この本を買った当時でもお二人のこの感じはよくわかったし
その後、川幅はもっと広がっていったように思う。
僕はというと、お二人とも大好きなので
その川を船であっちの岸へ行ったりこっちの岸へ行ったりしている。
その船を漕いでるときは、
たぶんデザイナーではなくファンとしてだと思う。